不動産特定共同事業と適格特例投資家限定事業は何が違う?
不動産クラウドファンディングの比較サイト–クラウリングです。
ファンドを組成することで投資家から資金を集め、資金調達の道を広げた不動産特定共同事業(不動産クラウドファンディング)。
しかし、ファンドの組成は許認可のハードルが高く、誰でもできるわけではありません。
資本金要件や財産的基礎の確立、業務管理者の設置など、厳しい要件があります。
小規模不動産特定共同事業や特例事業など、要件の異なる様々な事業形態がありますが、すべて不動産特定共同事業法(不特法)に基づいた許可、宅地建物取引業(宅建業)の免許等は必須。
ところが、不特法の例外措置のような事業があるのをご存知でしょうか?
先の許可が無くても届出だけで行える「適格特例投資家限定事業」です。
今回はこの、適格特例投資家限定事業ついて詳しく解説します。
適格特例投資家とは

適格特例投資家限定事業について説明する前に、まずは「適格特例投資家」とは?という点について解説します。
適格特例投資家は、「特例投資家」や「スーパープロ投資家」とも呼ばれます。
不特法により定義されるプロ投資家の中でも、不動産投資に対する専門的知識・経験が特に豊富だと認められる者が該当します。
また、宅建免許の保有と、不特事業の許可に係る欠格事由に該当しないことも条件です。
具体的に言うと、
不動産特定共同事業者、認可宅地建物取引業者(REITの運用会社等)、総合不動産投資顧問業者、金融商品取引法が定める適格機関投資家のうちの一部、一定のスーパープロのみの有限責任事業組合、一定の要件を満たす宅地建物取引業者や特定目的会社などがこれに該当します。
尚、金融商品取引法が定める「適格機関投資家」とは全く異なるので注意が必要です。
適格特例投資家限定事業とは

適格特例投資家限定事業は、2017年の不特法改正により新たに創設されました。
その改正法では、以下のように定義されています。
「不動産に対する投資に係る専門的知識及び経験を特に有すると認められる者として主務省令で定める者」(適格特例投資家)のみを相手方又は事業参加者とする第一号事業を意味する。こうした適格特例投資家限定事業については、不動産特定共同事業の許可が不要となり、届出のみで足りることとなる(改正法第59条)。
分かりやすく言うと、
出資してもらう相手が適格機関投資家のみに限定される事業であれば、不特事業の許可が無くても、届出のみで行なえる。
ということです。
また、以下のような記述もあります。
適格特例投資家限定事業を行うには原則として宅建業の免許を受けていることを要するが、不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引に係る業務の全てを宅地建物取引業者に委託する場合には、宅建業の免許を受けていることを要しない(改正法第59条第4項、第6条第2号)
つまり、
自社でファンド組成+不動産取引を行う場合には宅建業の免許が必要だが、不動産取引業務を他の宅建免許保有業者へ委託する場合は、自社は免許が無くても良い。
ということです。
このように、不特事業の許可も、宅建の免許も無くして、不動産ファンドの組成ができるのが、適格特例投資家限定事業なのです。
適格特例投資家限定事業の仕組み

事業を行うには、「適格特例投資家限定事業者」になる届出を主務大臣へ行うだけでOK。
何度も言うように、不特事業の許可は必要ありません。
しかし、宅建業の免許が無い場合は、不動産取引にかかる業務を行うことができません。
その場合は宅建業者へ委託しましょう。
自社で宅建免許を保有する場合は、委託の必要はありません。
そして、ファンドを組成し、適格特例投資家から出資を募ります。
後の流れは通常の不特事業とあまり違いはありません。
不動産を取得・運用し、出た利益から各投資家へ分配金を配当。
運用期間が満期に慣れば償還、売却あるいは2期目・3期目と再組成・募集継続など、運用方法を検討しながら進めます。
適格特例投資家限定事業の注意点

事業を行う上での主な注意点を2つご紹介します。
適格特例投資家が少ない
この事業で出資金を募る事ができるのは適格特例投資家に限定されます。
つまり、そもそもの母数が少ないのです。
2023年8月末現在、適格特例投資家の届出を行っているのはたったの13事業者。
(国土交通省:適格特例投資家届出一覧参照)
ただし、前述の通り、適格特例投資家は不動産投資のプロであり、資産を持つ事業者。
その出資の規模は大きなものです。
民泊物件のような小規模ファンドを扱うには不向きと言えるでしょう。
不動産特定共同事業法による厳しい行動規制
適格特例投資家限定事業者になること自体は難しくありませんでしたね。
ところが、許可取得後は様々な行動規制があるのです。
主なものでは、
・名義貸しの禁止
・情報管理の徹底
・事業内容や財産状況を記載した書類の保管と、希望する事業参加者に閲覧させる義務
などがあります。
そして、最も注意したいのは「分別管理」の実施義務。
分別管理とは、不特事業契約に係る財産を、自社の固有財産や、他の不特事業契約に係る財産と分別して管理することです。
単に帳簿を分ける方法もありますが、より安全性が高く、倒産乖離もできる「顧客分別金信託」による分別管理が望ましいでしょう。
詳しくは別記事「不動産特定共同事業における出資者保護の要「分別管理」とは?」をご覧ください。
まとめ
不特事業許可も、宅建免許も無くても、届出のみで不動産ファンドの組成ができるのが、適格特例投資家限定事業。
その仕組みとしては、ほとんど通常の不特事業と同じスキームで運用が可能。
ただし、出資の募集は適格特例投資家のみに限定され、様々な行動規制もあります。
それらを踏まえると、小規模物件をファンドとして扱うのには不向きかもしれません。
不特事業の形態も多様化していますが、それぞれ一長一短というところでしょうか。
不特事業に参入したいけど、許可要件が厳しくてどうしよう?
とお悩みの事業者様は、小規模不動産特定共同事業や特例事業に加え、この適格特例投資家限定事業も検討されてみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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