不動産特定共同事業への参入にデメリットはあるのか?
不動産クラウドファンディングの比較サイト–クラウリングです。
先日は、不動産特定共同事業に参入するメリットについて書きましたが、デメリットは無いのでしょうか?
そんなことはありません。というより、まず不動産特定共同事業者になることが大変で、それを維持するのもまた大変、という問題があります。それでも参入者が増えている背景には、その問題をクリアしてでも欲しい「魅力」があるからなのでしょう。
今回は不動産特定共同事業参入にまつわる問題と、それを越えた先に得られるものについて考えていきます。
不動産特定共同事業者になるまでの壁が高い

第一の問題は、そもそも不動産特定共同事業者になること自体が大変であること。
不動産特定共同事業法(以下、不特法)により、許可の基準が定められているのですが、中でも「業務管理者の設置」というのが最大のネックとなります。
業務管理者の条件である「宅地建物取引士の従業者であること」までは、不動産会社であれば問題ないでしょう。しかし、
ア.不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務の経験を有する者
イ.主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習を修了した者
ウ.登録証明事業から上記アと同等の能力を有するとの証明を受けている者
上記いずれかに該当する者、というのは一筋縄ではいきません。
なぜなら、ア.に関しては、他社で3年以上、不動産特定共同事業の業務をしたことのある人を引き抜くしかありません。
イ.については、令和4年2月末時点で指定された講習はありません。つまり、現時点ではやりようがない条件ということです。
ウ.に関しては、令和4年2月末時点で、ビル経営管理士登録証明事業、不動産コンサルティング技能試験・登録事業、一般社団法人不動産証券化協会認定マスターのいずれかの登録証明事業を行っている場合に限られます。
また、これらの条件を満たした従業員が退職や転職をし、業務管理者が不在となった場合には、2週間以内に要件を満たす業務管理者を設置する必要があります。
実はこれだけでなく、小規模不動産特定共同事業の登録後に3年以上の実務経験を積む。という選択肢もあるのですが、これについて詳しくは別記事で。もちろんこれも簡単なことではありませんが。
これらのことが、不動産特定共同事業者はなるまでも、維持するのも大変と言われる所以です。
ファンド(商品)を確保し続けなければいけない

厳しい要件をクリアし、やっとのことで不動産特定共同事業者になりました。すると次に出てくるのは商品の問題。元々不動産会社からの参入であれば、不動産の仕入れに関してはプロでしょう。そして、不動産特定共同事業では、不動産を小口化し、より多くの投資家を集めることで、更に良い物件を仕入れていくというサイクルが作れます。
しかし、多くの事業者は、場所や利回り、運用期間の異なる多数の商品を打ち出し、投資家はその中から比較検討して出資します。つまり、投資家にとって魅力的な商品をいかに揃えられるか、という点が、数多くある競合他社に勝つポイントとなるのです。
良い物件を仕入れて出資を集めて運用を成功させ、次はより良い物件を仕入れてまた出資してもらう。そのためには、投資家を満足させ続ける不動産を厳選し、手に入れ続ける審美眼と、金銭的な体力が不可欠です。従来の不動産投資や売買も行った上でのそれは、相乗効果も期待できますが、決して簡単なことではないと思います。
物件の管理は自社で責任を持つ必要が

従来の不動産投資であれば、投資家がオーナー(不動産の所有者)となるため、その管理の責任も基本的にはオーナーにかかってきます。もちろん、不動産管理業務を委託すれば、販売会社が管理を行うことになりますが、それは当然、管理費をもらいますよね?
ところが不動産小口化商品の場合、所有者はあくまでも販売会社になるので、管理の責任を負うことになります。実際の管理業務を自社で行うか、他者に委託するかどうかは別としても、その管理費は自社持ち、ということになるのです。管理費で利益を上げることはできません。
とはいえ、小口化商品の方で管理が疎かにし、住民などからクレームが出るなど運用に支障が出た、なんてことになると一気に信用問題です。反対に言うと、運用が上手く言っていると=管理も行き届いているということで、従来の不動産投資のオーナーにとっても安心材料になるかもしれません。
出資者を守る仕組みづくり

不動産を小口化するということは、出資者が多くなります。それはつまり、販売会社としては、それだけ多くの人に利益を出してもらうよう努力しなければならないということ。投資である以上はリスクがありますし、保証がないのはもちろんですが、それでもマイナスを出せば、やはり会社の信用は落ちてしまいます。
不動産特定共同事業は不動産投資のハードルを下げ、投資家を増やす可能性があるとともに、その分、多くの投資家の信用を背負うことにもなるのです。販売側としてもリスクはありますね。
そうした複数の出資者を守る方法として、不動産特定共同事業でよくあるのが「優先劣後」と「マスターリース・サブリース契約」。
優先劣後とは、出資総額のうちの優先出資分がお客様の出資で、劣後出資分が販売会社の出資となり、たとえ賃料が下落しても、劣後出資分から先に消化されていく仕組みです。
マスターリース・サブリース契約とは、出資者とマスターリース契約をするかたちで第三者が借り主との間に入り、借り主はその第三者とのサブリース契約により賃貸借契約を結ぶというもの。これにより、万が一借り主が居ない(空室)となっても、出資者に対しては、間に入った第三者が賃料を払うことになり、出資元本の保全性を高めるとともに、配当をより確実なものにします。
このように、不動産特定共同事業は単に不動産を小口化して販売、運用するというものではなく、投資家の方々にいかに安心して出資してもらうか?という仕組みづくりが重要で、それが上手くできれば、リピートに繋がり、従来の不動産投資や売買にも相乗効果となるでしょう。
まとめ
不動産特定共同事業は、参入が難しい上に維持も大変。仕入れや管理、運用に至るまで、かなりの気遣いが必要で業務量も多い、その割に、従来の不動産投資と比べると、得られる利益が少なく感じるかもしれません。そこが不動産特定共同事業のデメリットと言えるでしょう。
しかし、デメリットとメリットは表裏一体。これらの問題をクリアすることはお客様(投資家)にとっては大きなメリット。特に投資において、信頼できる不動産会社であると認識していただけるでしょう。
従来の不動産投資に+α、更に土台を固める意味でも決して損のない、むしろプラスの多い事業ではないでしょうか?

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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