小規模不動産特定共同事業の概要とその要件とは?
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小規模不動産特定共同事業は、その名の通り、不動産特定共同事業の規模の縮小版。
扱える不動産、出資金に制限が設けられていますが、その分、参入ハードルも低めに設定されています。
このことにより不動産特定共同事業を活性化させ、眠っている土地や不動産の有効活用を促すことが期待されています。
今回はそんな小規模不動産特定共同事業の概要と要件についてご紹介いたします。
小規模不動産特定共同事業とは?

小規模不動産特定共同事業は、平成29年の不特法改正によって新たに創設された事業です。
従来の不動産特定共同事業でファンドの運用を行うには、資本金の要件だけでもかなりハードルの高いものでした。
第1号事業者は1億円、第3号事業者でも5,000万円の資本金が条件で、地方の不動産会社等、規模の小さな企業はとても参入できません。
不動産特定共同事業は都心や一部の大企業に集中し、それ以上の広まりが見込めない状況だったのです。
しかし、地方ほど空き家や空き店舗等、持て余している土地や不動産が多いもの。
それらを有効活用し、地方創生に繋げるためにも、規模の小さな企業にも参入できる仕組みをと考えられたのが、小規模不動産特定共同事業なのです。
こちらは受けられる出資額に上限がある、つまり事業の規模にも制約がある代わりに、資本金要件を含め、様々な点において非常に参入障壁が低くなっています。
次は、その特徴をメリット・デメリット両面から見てみましょう。
小規模不動産特定共同事業の要件 ~メリット・デメリット~

小規模不動産特定共同事業には、従来の不動産特定共同事業とは異なる特徴があります。
メリット
・資本金要件が従来の10分の1
小規模不動産特定共同事業においてファンドの運用を行う、小規模第1号事業者の資本金要件は1,000万円です。
従来の不動産特定共同事業における第1号事業者の1億円と比べると10分の1ですから、ハードルは格段に下がりました。
・事業許可が許可制ではなく登録制
不動産特定共同事業と小規模不動産特定共同事業は、事業開始にあたり、いずれも都道府県または国土交通省に申請を行なう必要があります。
許可制である不動産特定共同事業は、要件を満たした上で、審査を通過して許可証の発行を受けなければなりません。
それに対し登録制の小規模不動産特定共同事業は、要件を満たし、申請書を提出しさえすれば、事業者登録が可能になります。
・業務管理者の資格講習が受けられる
不動産特定共同事業と小規模不動産特定共同事業のいずれも、業務管理者の設置が必須になります。
業務管理者の要件を満たすためには、宅地建物取引業の免許を保有している(宅地建物取引士である)ことの他にもう一つ、3つの条件のうちいずれかに該当しなければいけないのですが、そのうちの一つが「主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習」です。
そしてこの講習は、小規模不動産特定共同事業を対象にしか開催されておりません。
デメリット
・投資家一人あたりから受けられる出資額に上限がある
従来の不動産特定共同事業では、基本的に一人あたりの出資額に上限はありません。(ファンドごとに独自に出資上限が設定されていることはあります)
しかし、小規模不動産特定共同事業では、投資家一人あたりの出資額は100万円までと決められています。(特例投資家からの出資は1億円まで)
これは、運営会社が小規模であることを踏まえ、不動産特定共同事業に比べると万が一の倒産等のリスクが高いことを踏まえてのことでしょう。
・投資家からの出資総額に上限がある
投資家一人あたりの出資額だけでなく、その出資総額にも上限があります。
1つのファンドに対して受けられる出資額は1億円まで。
応募者多数となった場合でも、1億円以上の出資金を受け付けることはできません。
つまり、事業の規模自体がある程度制約されることになります。
これも、比較的小規模な事業者が責任を持って取り扱える、プロジェクトを遂行できる範囲に抑える目的があるでしょう。
小規模不動産特定共同事業者から不動産特定共同事業者へ

先程、小規模も含む不動産特定共同事業には業務管理者の設置が必須で、3つある条件のうちいずれかに該当しなければ業務管理者になれないと述べました。
その3つの条件というのが、
ア、不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務の経験を有する者
イ、主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習を修了した者
ウ、登録証明事業から上記アと同等の能力を有するとの証明を受けている者(不動産コンサルティングマスター、ビル経営管理士、不動産証券化協会認定マスター)
です。
しかし、先ほどもあったように、イ、「主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習」は小規模不動産特定共同事業を対象にしか開催されておりません。
そしてウ、の条件に関しても、その資格の取得に一定年数の実務経験が求められる等、容易ではありません。
つまり、従来の不動産特定共同事業において業務管理者となるには、ア、の条件を満たすことが一番現実的です。
とはいえ、新たに事業に参入したい企業からすると、「3年以上の実務の経験を有する者」は、すでに事業を行っている他社から引き抜くしか無いのでは?と思いますよね。
実はもう一つ方法があるのです。
それが、小規模不動産特定共同事業からステップアップする方法。
小規模不動産特定共同事業の業務管理者を3年経験することで、不動産特定共同事業の業務管理者の要件(ア、不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務の経験を有する者)を満たすことができるのです。
小規模不動産特定共同事業を運営中に、業務管理者の要件を満たす人材の確保ができたタイミングで、許可申請を出すことも可能。
実務的な面においても、小規模不動産特定共同事業で経験を積み、業務に慣れるという意味でも非常にメリットのある方法ではないでしょうか。
まとめ
小規模不動産特定共同事業の創設により、比較的に規模の小さな企業も参入しやすくなりました。
このことで、地方にある空き家や空き店舗の活用など、地方創生につながるプロジェクトが増えることが期待されています。
これが実現、活性化されれば、国や自治体としても、手間も費用もかけず、民間で大きな問題解決が図れるメリットがあります。
そして事業者にとっては、今まで資本金や財産的基礎の点で諦めざるを得なかった不動産特定共同事業への参入が、小規模とは言え、可能になったことは大きな改革です。
さらに、従来の不動産特定共同事業へのステップアップへの道ともなり、将来性もある事業です。
投資家にとっては、参入企業が増える=不動産小口化商品の選択肢が広がるという点でメリットがあると言えるでしょう。
そんな三方良しとなる小規模不動産特定共同事業、今後ますます参入企業は増えていくのではないでしょうか。

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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