不動産特定共同事業者の種類 ~第1号事業者編~
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不動産特定共同事業者は、第1号事業者から第4号事業者までの4種類に分かれます。
それぞれ定義や、必要な資本金が異なります。中でも第1号事業者は、不動産小口化商品(ファンド)を組成し、契約の締結から運用、利益の分配など、すべてを自社で完結できる為、ハードルが高くなっています。
しかしその分、出資者の募集やファンドの運用を委託する必要もなく、余計な経費をかけずに済むメリットがあります。
今、不動産特定共同事業への参入を検討中の事業者様も、第1号事業者を目指したいと思っていませんか?
今回は、そんな第1号事業者の概要と、なるにはどうすれば?について。また、不動産クラウドファンディングの始め方についても解説。不動産特定共同事業の始め方(第1号事業者編)をお届けします。
不動産特定共同事業者になる要件

まずは不動産特定共同事業全体に関する許可の要件をおさらいしましょう。
1,資本金要件
不動産特定共同事業では投資家の財産を長期間預かることから、事業者には十分な財産的基礎が求められます。事業の種別ごとに求められる資本金の額は異なりますが、最低でも1,000万円以上の資本金がなければ、いずれの種類の事業でも、許可を受けることができません。
2,純資産要件
1と同じ理由から、事業者はその財務の健全性も求められます。事業者の資産の合計額から負債の合計額を控除した額が、資本金又は出資額の100分の90に相当する額を満たす必要があるとされており、純資産要件を充足しなくなった場合は許可が取り消されます。
3,役員等に、過去5年以内に不動産特定共同事業に関する不正行為をした者がいないこと
4,業務管理者の設置
次の(1)~(3)のすべての要件を満たす「業務管理者」を、事務所ごとに最低1名設置する必要があります。
(1)許可を受けようとする者の従業者であること。
(2)宅地建物取引士であること。
(3)次のア~ウのいずれかに該当する者であること。
ア.不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務の経験を有する者
イ.主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習を修了した者
ウ.登録証明事業から上記アと同等の能力を有するとの証明を受けている者
5,約款の適合性
※第一号事業又は第三号事業の許可を受けようとする事業者で、一般投資家を対象に事業を行うことを予定している事業者のみ対象
6,財産的基礎
不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる財産的基礎を有するものであることが要件とされており、具体的には
(1)許可の申請の日を含む事業年度の前事業年度における財産及び損益の状況が良好であること。
(2)財産及び損益の状況が許可の申請の日を含む事業年度以降良好に推移することが見込まれること。
が求められます。
7,人的構成
事業を適確に遂行するに足りる人的構成を有するものであることとして、具体的には、次の(1)及び(2)の基準に該当することが求められます。
(1)不動産特定共同事業を公正かつ適確に遂行できる組織構成を有すること。
(2)許可の申請をした法人の役員が当該法人以外の法人の常務に従事し、又は事業を営んでいる場合にあっては、当該役員が当該法人以外の法人の常務に従事し、又は事業を営むことにより不動産特定共同事業の公正かつ適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
以上のように、不動産特定共同事業者になるだけでも、様々な要件を満たす必要があるのです。各項目の詳細については以下、国土交通省の資料をご覧下さい。
参考:不動産特定共同事業の許可の要件(国土交通省)
第1号事業者の定義とは

第1号事業者の定義は、『不動産特定共同事業契約を締結し、契約に基づいて運営される不動産取引から得られる利益等の分配を行う事業者』とされています。
資金需要者(ファンドを組成し出資金を集めたい人)であり、実際に投資家と匿名組合契約や任意組合契約を締結する契約者であり、また、その資金で不動産を賃貸・売買して運用し、その収益から投資家に分配金を配当する役目でもあるオールラウンダーですが、投資家の募集・勧誘に関しては第2号事業者に委託することも可能です。
ちなみに、第1号事業者の要件を満たせば、不動産特定共同事業契約締結の代理もしくは媒介をする第2号事業者の要件も満たすことになります。
第1号事業者になるのは難しい?

第1号事業者になる為に必要なことは2つ。
前述の不動産特定共同事業の許可要件の中の「1,資本金要件」と「2,純資産要件」について、第1号事業者に必要な要件をクリアするだけです。
といっても、第1号事業者は資本金1億円以上が条件。
そして、純資産要件は資本金又は出資額の100分の90に相当する額ですから、9,000万円以上ということになります。
これらの要件を満たさなくなった場合には許可が取り消されますから、ずっと維持しなければならないのも厳しい条件です。
このように、第1号事業者になるには金銭面で非常に高いハードルがあり、なかなか事業者が増えず、不動産特定共同事業そのものがあまり普及しませんでした。
しかし、平成29年に不動産特定共同事業法(不特法)が改正され、小規模不動産特定共同事業が開始。資本金1,000万円以上で許可が取れる「小規模第1号事業者」が新たに設置されました。
受けられる出資額の上限や、投資家一人あたりの出資上限が設けられる等の制約はあるものの、事業者の定義は第1号事業者と同じで、募集も契約も分配も行えます。
これにより事業への参入が増え、不動産特定共同事業全体の活性化にもつながったのです。
今、不動産特定共同事業への参入を検討されていて、資本金の問題から第1号事業者を諦めている方は、この小規模第1号事業者の許可を狙ってみてはいかがでしょうか。
第1号事業者になれば不動産クラウドファンディングができる?

話は変わりますが、不動産特定共同事業のなかでも、不動産クラウドファンディングにより出資金を集めたい、とお考えの事業者は多いでしょう。今はそちらの方が主流と言って間違いありません。
ただし、第1号事業者(不動産特定共同事業者)になるだけでは、不動産クラウドファンディングを事業とすることはできません。
そのままでは電子取引業務は認められず、契約書等を必ず書面でやり取りする必要があるのです。
不動産クラウドファンディングを事業として行うには、
●電子情報処理組織の管理
●電子取引業務を行える事業者か
●クーリング・オフ制度の制定
●定期的な情報提供
などについて定められた国土交通省の不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインに沿い、電子取引業務を的確に行うために必要な体制が整備されていなければなりません。
また、それに対する審査を受け、認可を取得する必要があります。
このように、様々な許可や要件をクリアし、ようやく不動産特定共同事業者として、様々な業務を行えるようになるのです。
まとめ
不動産特定共同事業者には、第1号事業者~第4号事業者までの4種類があり、中でも募集・契約・運用すべてを行える第1号事業者は、不動産特定共同事業におけるエリートと言えます。
しかし、資本金1億円以上など金銭面でのハードルが高く、参入は難しいものでした。そこで改正法が施行され、小規模不動産特定共同事業を行う小規模第1号事業者が新たに設定。
こちらなら資本金1,000万円から募集・契約・運用をすることが可能となり、一気に参入しやすくなりました。
そもそも不動産特定共同事業者になるだけでも様々な要件をクリアしなくてはいけません。せっかくなら、第1号事業者(小規模第1号事業者)の許可を取り、自社で完結できる体制にしておくと良いのではないでしょうか。
そして、不動産クラウドファンディングによる事業体制も整えることで、できるだけ手間もコストも省いた運営をしたいですよね。
次回は、第2号事業者について解説したいと思います。

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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