不動産特定共同事業

不動産特定共同事業において重要な「倒産隔離」の方法と必要性

  • SNSでシェアする

不動産クラウドファンディングの比較サイト-クラウリングです。

不動産特定共同事業不動産クラウドファンディング)における「倒産隔離」とは、運営会社を含め、ファンド運用に関係する事業者が万が一倒産してしまっても、そのファンドに対する出資金は保護され、投資家に安全に返還される仕組みを指します。

少し前には、アメリカの暗号資産大手FTXトレーディングの経営破綻が大きな話題となりました。

これにより多くの資産を失った投資家も少なくないでしょう。(返金の手続きは進められている?ようですが…)

あらゆる投資や資産運用において、いや、銀行などもそうですが、会社の倒産というのは、顧客にとってどうすることもできない最大のリスクの一つ。

その不安要素を取り除くことは、事業者にとっても、事業拡大のためにも重要で、場合によっては義務化されています。

今回はそんな倒産乖離の方法と必要性について解説します。

倒産隔離とは?

倒産隔離とは、資産(不動産投資の場合は不動産)の証券化(小口化)にあたり、その資産を保有・運用する関係事業者の倒産リスクから切り離すことを意味します。

不動産特定共同事業の場合は、そのファンド(不動産小口化商品)の運用に関わる事業者、

出資を募集する事業者・運用する事業者・SPC(特別目的会社)など、1社~複数の事業者すべての倒産から、出資金を保護することが求められます。

万が一いずれかの事業者が倒産しても、安全に出資金を返還できることは、投資家にとって重要な安心材料になります。

また、同時に資産の流用防止にもなることがほとんどです。

流用防止とは、そのファンドの運用以外の目的に出資金を使われてしまう(ポンジスキームなど)をできないような仕組みになっていることを指します。

ただし、これはあくまでも倒産リスクや資産流用に対する安全性の話。

そもそもの運用において分配金想定利回りを下回ったり、元本割れしたりする可能性は全く別の問題なので、「リスクが無い」わけでは無いのです。

詐欺でなくても、倒産などのアクシデントがなくても、元本は保証されません

事業者側からの発信においても、投資家に勘違いをさせないよう、表現には注意が必要です。

分別管理で倒産乖離

不動産特定共同事業における倒産乖離にはいくつかの方法があります。

1,ファンドごとに別口座で出資金を管理する分別管理

シンプルに、事業者の資産と、各ファンドの資産とを別々の預金口座で管理する方法です。

一番単純でやりやすい方法と言えますが、流用防止の点では十分でも、倒産乖離の点では不完全かもしれません。

なぜなら、口座が分かれているとはいえ、結局は自社の管理下に置かれているため、万が一その事業者が破綻した場合には、分けた出資者の財産も凍結される危険があるからです。

そうなると、出資金の返還も難しくなります。

2, ファンドごとに信託銀行に信託する分別管理

出資金をファンドごとに信託銀行等に信託する方法で、「顧客分別金信託」と呼ばれます。

流用防止になるのはもちろん、倒産乖離機能も優れています。

こちらの場合、出資金の管理者は信託銀行になるので、万が一事業者が破綻した場合でも、信託銀行(受託者)から受益者代理人を通じて、各投資家へ資産を安全に返還することができます。

3,SPCが実施する特例事業

SPCとは、ファンド(事業)を運営するために設立される法人のことです。

特例事業は、SPCが主体となって行われる不動産特定共同事業です。

SPCは、自社だけでは事業を行うことはできず、それぞれの業務を、許可を受けた不動産特定共同事業者に委託する必要があります。

出資者募集業務に関しては第4号事業者、不動産運用業務は第3号事業者に委託されます。

SPCと、第4号事業者、第3号事業者とはそれぞれ独立しているため、出資金を別事業に流用したり、倒産して返還不能になったりというリスクがほぼありません

また、たとえ事業者が破綻しても、SPCはファンド運用を続けることが可能なので、対象不動産(現物不動産)も、出資金も倒産乖離を図れます。 最も安全性の高い倒産乖離と言えるでしょう。

倒産乖離の必要性

では、倒産乖離の仕組みはどこまで必要とされているのでしょうか?

それは、事業者の種類やスキームによって異なります。

もともと許可を受けるまでのハードルが高く、かなりの財産的基礎・財務の健全性が求められる第1号事業者には、分別管理の義務はありません。(資本金要件だけでなく、経営状況が良好でなければ許可を得られない、継続できない厳しい基準をクリアしているためと思われます)

第3号事業者にも義務はありません。

ただし、特例事業のため、金融商品取引法上のみなし有価証券とされます

つまり、不動産特定共同事業法(不特法)免許の他、第二種金融商品取引業の登録も必須となります。

(参考:金融商品取引法について(金融庁))

より金融商品に近い扱いとなり、通常の不動産特定共同事業には無い要件や制限もついてきます。

契約締結の代理・媒介をする立場である2号事業者・第4号事業者は、顧客から一時的に資金を預かることが想定されるため、信託銀行に信託する分別管理が義務付けられています。

このように、それぞれ事業者の行う業務内容などにより、求められる対策が異なります。

また、義務ではない事業者に関しても、投資家はより安心感のあるファンドを選びたいと考えるので、もはや倒産乖離は、不動産特定共同事業者にとってはマストと言っても過言ではないでしょう。

まとめ

倒産隔離とは、ファンド運用中に万が一関係事業者が倒産しても、出資金が保護され、投資家に安全に返還される仕組みを指します。

その方法はいくつかあり、事業者により必要な方法は異なりますし、義務ではない場合もあります。

しかし、昨今の投資業界の流れを見ていると、倒産乖離はもはや必須条件と言えるのではないでしょうか。

事業者としては、できるだけ安全性の高い方法を取り、顧客からの信頼を得たいところです。

そして投資家としては、いずれも元本を保証するものではないことを忘れてはいけません。

事業者は、出資金保護のための対策と同時に、それでも存在するリスクの説明を徹底することで、より投資家からの信頼感が高まるでしょう。

投資事業において信頼は一番の強みです。

顧客財産保護を徹底することが、結果的により多くの出資を集め、より大きなファンドを扱う=自社の事業の成長につながります。

ぜひ、お客様第一の視点で商品・対策・仕組みづくりを考えてみて下さい。

この記事を書いた人

クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本

この記事をシェアする

おすすめの記事