不動産特定共同事業と確定申告
不動産クラウドファンディングの比較サイト-クラウリングです。
2月後半~3月前半と言えば確定申告のシーズンです。少し前までは会社員には関係のないものというイメージが強く、確定申告がどういうものなのか知らない人も多かったでしょう。しかし、最近では副業や個人投資をする人も増えてきて、確定申告の対象となる人口も増加傾向にあります。
不動産特定共同事業(不動産クラウドファンディング)での利益も所得とみなされますので、もちろん申告の対象です。しかし、一般的な不動産投資とは少し性質が異なります。不動産特定共同事業への参入を検討中の事業者様も、税金における従来の不動産投資との違い、ぜひ知っておいて下さい。
今回は不動産特定共同事業における確定申告についてご紹介します。
不動産特定共同事業の契約には2種類ある

確定申告の話をする前に、まずは、不動産特定共同事業の契約(不動産小口化商品)には「匿名組合型」と「任意組合型」の2種類あるということを説明しなければなりません。
「匿名組合型」の場合、投資家は事業者に出資し、事業者が物件を購入・運用することで得た利益を、投資家に分配します。その物件の所有者は事業者なので、投資家は運用・管理に関わることなく、利益配分の権利が得られます。この場合、投資家は不動産の運用・管理を行っていないため、配当で得た利益は不動産所得ではなく、雑所得という扱いになります。
「任意組合型」の場合、投資家と事業者が共同で出資し、物件を購入・運用します。そのため、物件の所有者は「事業者」と「投資家」の両者になります。投資家も物件の権利を持つため、不動産所得として扱われます。(所得の種類について詳しくはこちら)
ただ、任意組合型は投資家にとってリスクが高く募集が集まりにくいことから、多くの不動産小口化商品は匿名組合型が採用されています。そこで今回は、匿名組合型の不動産小口化商品に出資したことを想定した確定申告を見ていきます。
雑所得として確定申告する場合

まずは確定申告が必要かどうかを確かめます。1年間の雑所得の合計が20万円以下であれば、確定申告は不要です。ただし、ここで言う雑所得の合計というのは、不動産特定共同事業による利益だけではありません。副業で得た収入や、メルカリやヤフオクなどのネット販売で得た利益、年金、その他の(雑所得として扱われる)投資での利益もすべて合算した上で20万円を超えるかどうかが判断基準となります。ちなみに「所得」は「収入」から「経費」を引いた額になるので、単純に20万円の売上があったから確定申告が必須とは限りません。※
雑所得の計算方法についてはこちらもご覧ください。
また、年間20万円以下の所得であっても、年収が2,000万円を超える会社員や、青色申告を行う事業主、ふるさと納税や医療費控除を受ける場合、このいずれかに該当する人は確定申告が必要です。(会社員がふるさと納税をした場合にはワンストップ特例制度を使い、確定申告が不要にできる場合もあります)
尚、匿名組合型の不動産小口化商品の場合は、分配金が支払われる際に源泉徴収額(源泉徴収税率は20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%))が引かれます。事業者側で税金の処理をしてくれるので、出資者はこの時点で納税の手続きをする必要がなく、手間がかかりません。また、もしもこの出資者の所得税率が20.42%未満の場合は、確定申告をすることによって、払いすぎた税金が還付されます。忘れずに申告しましょう。
※不動産特定共同事業による利益は、源泉徴収額が引かれる前の分配金全体で計算されます。
不動産特定共同事業でも節税できる?

相続について考えた場合に、現金よりも不動産の方が、相続税が安くなるため、一般的に不動産投資は相続税対策や節税になると言われています。しかし、匿名組合型の不動産特定共同事業の場合は不動産の所有権が投資家にはないため、節税対策にはなりません。(任意組合型であれば投資家も所有権を持ち、運用に関わっていることになるので、減価償却費などの経費が認められ、投資における所得額を抑えるなど多少の節税は可能です。また、相続税対策が可能な場合もあります。)
ただし、匿名組合型も含め、不動産特定共同事業を学ぶためのセミナーに参加したり、投資物件を見学しに行ったりした場合、そこにかかった参加費や交通費の一部を経費として計上できる場合もあります。あくまでも事業の為に必要なものとして認められればですが、経費になれば所得を減らすことができ、結果的に節税対策にはなるでしょう。
従来の不動産投資とは違った特徴

とはいえ、不動産特定共同事業はもともと、従来の不動産投資とは全く異なる性質を持った商品です。節税を売りにした投資商品ではありませんし、所得を抑えるために余計な経費を使えば本末転倒です。それよりも、小口化商品であることの最大のメリットである、少額からでも不動産を運用できる手軽さやリスクの小ささ、比較的短いスパンで運用できる計画性の高さをうまく利用し、堅実な資産運用をすることが一番の目的になるのではないでしょうか。
不動産運用を行う事業者としては、こうした従来の不動産投資との違いを知り、差別化を明確にすることで、いままで獲得できなかったターゲット層も顧客として取り込むチャンスが広がると思います。
不動産投資=節税・相続税対策といった高所得者層向けの商品とは別に、不動産特定共同事業は誰でも出来る手軽な投資として、商品の選択肢を広げてみませんか?
まとめ
今回は確定申告から、不動産特定共同事業における税について見ていきました。
税金に関しても、従来の不動産投資と、不動産特定共同事業では大きな違いがあることが分かります。お客様の目的によって様々な商品が提案できるようになりますね。
確定申告は運用が終わってからのことで、商品(事業者)には直接は関係がないともいえますが、顧客からすると、出資して、利益を得て、その税を納めるところまでが一連の流れ。特に投資初心者や確定申告をしたことがない人にとっては不安材料の一つになるでしょう。そこで、不動産運用を行う事業者として、お客様にこうした税金に関するレクチャーやアドバイスもできると、より信頼関係を築けるかもしれません。
新たな投資家層への手厚いフォローこそが不動産特定共同事業を成功させる鍵。徹底的に顧客目線になり、寄り添った商品の提案ができれば、必ず従来の不動産投資商品へも相乗効果が生まれるはずです。

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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