不動産特定共同事業の開発型ファンドとは?
開発型ファンドは、投資家から集めた資金で不動産開発を行い、完成後、その物件の運用や売却により収益を得るファンドです。
完成前の物件への投資となるため、予定利回りから前後する可能性が高く、不動産特定共同事業の中では比較的ハイリスク・ハイリターンな商品と言えるでしょう。
そんな開発型ファンドは、一般的な既存物件を運用するファンドとはどう異なるのか?
開発型ファンドのメリット・デメリットは?
事業者目線と投資家目線、それぞれ異なる視点から見ていきましょう。
これから不動産特定共同事業への参入を検討されている事業者様、すでに事業は行っているが、開発型ファンドは扱ったことがないという事業者様は、ぜひご参考にしていただければと思います。
開発型ファンドとは?

不動産投資による収益(配当の形式)には、
●物件を住居やテナントとして賃貸し、その家賃収入による利益を得るインカムゲイン
●物件を取得時より高く売ることにより売却益を得るキャピタルゲイン
の2種類あります。
不動産特定共同事業にも、インカム型のファンドとキャピタル型のファンドがあり、キャピタル型のファンドの多くが「開発型ファンド」となります。
具体的に言うと、
投資家から集めた資金で土地を取得し、そこにマンションやビルを建て、その物件を売却した利益を原資に出資元金と分配金が償還される商品がそれにあたります。
あるいは、建てられた物件を運用して得た利益を原資とする開発型ファンドもあります。
いずれにしても、既存の物件に対して出資を募るのではなく、土地や建設費など、これから建てる物件の開発費を募るのが「開発型ファンド」なのです。
まだ建っていない物件への投資というのは、かなり特殊な不動産投資と言えるかもしれません。
開発型ファンドのメリット

そんな開発型ファンドにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
事業者・出資者それぞれの立場から見ていきましょう。
事業者にとってのメリット
●少ない自己資金で不動産開発が可能
自己資金だけで土地の仕入れや建設費を賄う余力がなくても、十分な融資を受けられる見込みがなくても、投資家からの出資を集めることができれば、新築のビルやマンションを建てることができます。
●より大きな売却益が得られる可能性がある
運用するにせよ、売却するにせよ、既存(中古)物件と比べると、新築は動くお金が大きくなります。
うまくいけば、事業者としても大きな利益を得られる商品のひとつです。
●実績づくり
建設後すぐに売却したとしても、そこできちんと利益を出せれば、開発実績、販売実績として、事業者としての信頼に繋がります。
投資家の出資金で開発した案件で実績を作り信頼を得て、またさらに投資家が増えて…というサイクルができれば、またさらに大きな開発も可能になっていきます。
出資者にとってのメリット
●気軽に新築物件に投資ができる
不動産投資において、新築物件への投資は当然高額になり、一般投資家には到底手を出せるものではありませんでした。
しかし、少額から出資可能な不動産小口化商品でも、開発型ファンドは物件を建てるための資金集めなので、間接的に新築物件に投資しているようなもの。
売却も運用も新築物件の水準で行われるため、中古物件の運用よりは、比較的高利回りを狙える特徴があります。
●売却型の場合は短期間で高利益が期待できる
売却型の場合はファンド組成時に不動産の売却予定が決まっていることも多く、売却できた時点で出資元本と分配金が償還されます。
そのため商品によっては、運用型のファンドと比べてかなり短い期間でより多くの利益を挙げられる場合もあります。
●運用型の場合、配当以外の特典が付く場合も
建設した物件を運用し、その収益を分配するインカム型の場合、その開発を支援(出資)してもらったお礼として、配当以外に特典が付くこともあります。
例えば、建設した物件でホテルを運営した場合その宿泊チケットをもらえたり、商業施設の場合、テナントの飲食店の利用券をもらえたりと、開発型ならではのリターンがあることもあります。
開発型ファンドのデメリット

それでは反対に、事業者・出資者それぞれの視点からデメリットも見てみましょう。
事業者にとってのデメリット
●既存物件の運用にはないリスクがある
開発型ファンドは、開発中のトラブルや工期の延長など、既存物件の運用にはないリスクが存在します。
そのことは投資家にとっても懸念事項であるため、発生する可能性のあるリスクを把握し、その対策や、万が一の際の対処法(被害を最小限にする工夫)を示せなければ、なかなか出資を集めることができません。
●資金調達から収益になるまでの期間が長くなる
開発型ファンドの場合、開発計画▶建築工事▶運用(売却)という大きく3つのフェーズに分けて進められます。
投資家から資金を集めるタイミング(土地購入時、建設時など)が早ければ早いほど、実際に収益(賃料や売却益)が入るまでの期間が長くなり、それに比例し、時間も費用もリスクも高まります。
明確なスケジューリングと、それを実行できる根拠を提示することで、投資家の不安を払拭することが求められます。
このように、開発型ファンドはリスクの高さがネックになりがちです。
事業の成否は、投資家へのプレゼン力にかかっていると言っても過言ではないでしょう。
出資者にとってのデメリット
●予測しづらいリスクが多い
先程の事業者にとってのデメリットでも述べたように、開発型ファンドのリスクは多岐にわたり、予測が非常に困難です。
実績があり、リスクマネジメントのできる事業者の商品を選ぶことで、できるだけリスクを回避したいものです。
●物件が完成し、売却もしくは運用開始まで収益が得られない
既存物件の運用の場合は、出資後(募集金額に達した後)、その物件の家賃収入が発生次第、決められた配当日(年に数回程度)に配当が得られる場合が多いです。
それに対して開発型ファンドは、出資後に建設が始まり、完成後に売却又は運用が始まるまでは収益が出ません。
つまり、少なくとも建物完成までの期間は一切配当を受け取れないのです。
その期間が長くなればなるほど、やはり不安になりますよね。
クラウドファンディングによる開発型ファンド活用事例
実際に不動産特定共同事業(不動産クラウドファンディング)による開発が行われた事例を紹介します。
国土交通省の「不動産特定共同事業(FTK)の利活用促進ハンドブック」(令和3年6月)に記載のココファン・ナーサリー旗の台事業。
この事業では、不動産クラウドファンディングにより募集した出資金を使い土地を購入。
その土地に保育所を建設・運営する開発が行われました。
この事業成功の一番のポイントは、投資家へのアピールにあったといえるでしょう。
その土地に保育所を建てる計画ができた背景や保育所の必要性、運用による収益の見込みや安定性を丁寧に説明。
また、保育所を運営する事業者の運営方針や想いを発信するなど、個人投資家の理解と共感を得るプレゼンをしたことで、出資金を集めることに成功しました。
開発型ファンドは、まだ見ぬ未来の不動産や事業への投資。
その不明確な将来性をいかにリアルに感じてもらえるか、実現性があるように見せられるかが、開発型ファンドの販売には重要です。
そしてその説得力のもとは、確かな実績やリスクへの対策・対処法といった信頼に足るエビデンスにあります。
まとめ
不動産特定共同事業の開発型ファンドを活用すれば、投資家から集めた資金を土地購入や建築代金に充てられます。
よって、自己資金だけでは足りない、融資も見込めないという場合の有効な資金調達手段となります。
また、より大きな事業、物件の開発も可能になるでしょう。
事業者にとっては実績にもなりますし、メリットだらけですよね。
しかし、開発中のトラブルや工期の延長など、開発型ならではのリスクもあり、事業者にとっても、投資家にとってもハイリスク・ハイリターンな商品と言えるかもしれません。
完成物件を取得・運用するファンドはよくミドルリスク・ミドルリターンの不動産投資と言われますが、それとはターゲット層が異なると考えて良いでしょう。
利益が少なくても、時間がかかってもリスクを小さく、堅実にコツコツ投資したいタイプの人。
多少リスクが大きくなっても、できるだけ短期間で大きな収益を得たい人。
商品のラインナップを充実させれば、幅広い投資家ニーズに応えることができます。 今後、開発型ファンドの組成も検討してみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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