不動産特定共同事業許可申請の流れを解説-事前準備編-
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不動産特定共同事業を始めるためには、不動産特定共同事業の事業許可証を国土交通省または都道府県庁から受け取らなければなりません。
今回のブログでは、事業許可申請を行ない許可証を受け取るまでに必要な流れを解説します。
事業許可証を受け取るまでのプロセスは全部で5つのプロセスです。
「事前準備」「事前面談」「事前相談」「許可申請」「許可審査」の順番に課題をクリアしていかなければなりません。
初回は「事前準備」に焦点を当てて、事業許可に必要な事前準備について考えていきます。
事前準備では全体の流れの把握と現時点で出来る準備を行なう
不動産特定共同事業の事業許可を取るためには、事前準備をしっかり行なうことが大切になります。
とにかく、用意するべき書類が膨大であること、事業許可を得るためにクリアしなければならない条件がいくつもあるため、事前準備の段階でしっかりと計画を立てる必要があります。
事業を行なう主体である事業者が、事業許可申請を満たしているかどうかを把握して、その条件を満たしていないのであれば、体制を整える必要があります。
さらに「事前準備」段階では、事前面談を行なうために必要な書類や条件を整理しつつ、その次の「事前相談」で必要になる(提出する)書類等の記述、準備を並行して行なっていきます。
事業の種類によっても準備するべき項目は異なりますが、ここでは不動産特定共同事業の許可に必要な共通要件と電子取引業務の許可申請を有無で分けて整理していきます。
不動産特定共同事業の許可申請に必要な要件を満たすための準備
まずは、事業許可に必要な要件を整理して一つずつクリアしていきましょう。
書類を用意するだけでなく、組織の整備などが必要になる場合もありますので、事前に確認していきます。
資本金要件を満たす
事業許可を得るために必要な要件として資本金要件を満たす必要があります。
資本金要件は、投資家の長期間に渡り預かることからも十分な財産的基礎が求められます。
不動産特定共同事業法-第7条第1号に記載されている通り、資本金または出資の額が次の条件を満たしている必要があります。
一号事業者:1億円
二号事業者:1,000万円
三号事業者:5,000万円
四号事業者:1,000万円
一般的に多くの事業者が許可申請において1号事業の許可取得を目指すことになりますが、そのための要件として資本金が1億円以上であることが要件になるのです。
したがって、資本金が1億円に満たない場合は、増資をしなければなりません。
ここで疑問に思われた方もいらっしゃると思いますが、増資をする場合のタイミングについてです。
この点については原則的に、次のステップにあたる「事前面談」の時点で、資本金要件を満たす必要があります。
ただし、例外的なケースもあるようで、例えば、現時点での資本金が9,500万円、増資はいつてもできるような状態(金銭的な要件として)で、増資のタイミングも決まっている(〇月〇日に増資予定)ようなケースにおいては、例外的に申請業務を進められることもあるようです。
この点における金額の基準や目安については、ハッキリとした基準はありません。
あくまで通念上の解釈としてケースバイケースで判断されます。
したがって、原則的に「事前面談」のタイミングで増資をしておくのが望ましいです。
業務管理者の設置
不動産特定共同事業の業務は非常に複雑です。
投資家の勧誘業務や契約、帳票類の発行、管理においても厳格に遂行しなければなりません。
これらの業務の適格性を担保することが、言わば投資家の安心につながるのです。
不動産特定共同事業における業務管理者の責任は、会社の代表者よりもある意味では大きいと考えることもでき、不動産特定共同事業を行なう事業所に最低1名の業務管理者を設置する必要があります。
業務管理者は、許可を受けようとする者の従業者で宅地建物取引士の登録を受けているものかつ以下の要件を満たしていることが条件になります。
- 1-不動産特定共同事業の業務に関して3年以上の実務経験がある者
- 2-主務大臣が指定する不動産特定共同事業の実務講習を修了した者
- 3-次のア~ウのいずれかの資格があること
- ア-ビル経営管理士登録証明事業
- イ-不動産コンサルティング技能試験・登録事業
- ウ-一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
この業務管理者を確保して適格な事業運営を行なうことが事業許可申請の大きなポイントになります。
多くの投資家の投資資金を預かり運用していくことになりますので、これらの条件を満たした人材を確保しなければならないのです。
主務大臣が指定する不動産特定共同事業の実務講習については令和4年2月時点ではありません。
ただし、小規模不動産特定共同事業については、小規模不動産特定共同事業「業務管理者講習」があります。
2022年度は10月から開催されており、23年度も同じくらいの時期に開催されるのではないかと予想されます。
提出書類を整えるための準備
事前面談や事前相談では様々な書類の提出を求められます。
必要書類の中には、事業者だけでは解決できない問題もあるため、予め何が必要なのかを把握しておくことで、事業許可申請を効率よく行なうことができます。
監査証明書付きの貸借対照表、損益計算書
事前面談で必要な書類の一つとして、直近3期分の監査証明書付きの貸借対照表と損益計算書を用意することが求められています。
この監査証明とは、財務諸表がその企業の経営成績およびキャッシュ・フローの状況ならびに財政状態を”適正”に表しているかについて監査して証明するものです。
つまり「この財務諸表は適正なものですよ」という公認会計士または監査法人の”お墨付き”をもらうことが求められるのです。
監査証明書の発行は、税理士で行なうことはできず公認会計士又は監査法人のみ行うことのできる業務です。
また、「監査」は会社から独立した第三者が行う必要がありますので、貴社の会計顧問が公認会計士の資格を持っていたとしても監査を行うことができません。
気になる費用ですが、インターネットで調べたところ、事業者の売上規模によって異なるようで、例えば、売上規模が10億円~50億円の場合、3期分で190〜300万円と記載されています。(※不動産特定共同事業法の許可申請に必要な監査証明サービス-監査法人タカノ様のWebサイトを参照)
監査証明書の準備には、1ヶ月単位の時間がかかりますので事前に計画的に進めていく必要があります。
国土交通省のWebサイト内では「監査証明を受けていない場合はご相談ください」と記載があります。
万が一、事前面談の時点で監査証明書の発行が間に合わなかった場合は、証明書が用意できる目処を報告ながら、並行して面談を進めていくようにしましょう。
組織図・事業体制図
事業の組織図を用意します。
組織図は一般的なフローチャート形式で作成すれば問題ありません。
会社全体の事業構成と不動産特定共同事業の担当部署が分かるものを明記します。
会社概要
会社のパンフレットなどを用意します。
事業者以外にも関連会社(親会社・子会社等)がある場合は、その組織図及び事業内容が分かるように明記しましょう。
その他
事前準備では主に、申請に必要な要件を満たすための準備や手続きを予め把握して、行動することで、後の作業を効率よく進めることができます。
ここまで紹介した準備以外にも、事前面談で用意する書類・事前相談で用意する書類の準備も計画的に行なうようにしましょう。
これらの書類についての解説も次回以降のブログでご紹介します。
電子取引業務を行なう場合
不動産特定共同事業で電子取引業務を行なう場合は、別途、個別の準備が必要になります。
電子取引業務を行なう場合は、個人情報の管理、情報セキュリティ体制の構築、システム運用体制の整備等が一定レベルの水準を満たしていることが求められてきます。
個人情報保護等の体制に係る認証取得が分かる書類
電子取引業務を行なう場合には、原則的にPマーク、ISO27001、JISの認証が必要になります。
これらの認証を得るまでには、平均して7ヶ月〜10ヶ月程度の期間を要します。
不動産特定共同事業の許可申請についても一般的に10ヶ月程度の期間を要しますので、不動産クラウドファンディングの事業を開始しようと考えている事業者は、早急に認証取得に向けて取り組まなければなりません。
電子取引業務においては、事業者が契約成立前に重要事項等の説明を行なうことはしないため、投資家がそれらを十分理解しないまま、投資の意思決定を行なうことを防ぐための体制づくりが必要になります。
さらに、不動産特定共同事業の電子取引業務では、個人情報保護、情報セキュリティ体制の構築は必要不可欠です。
これらの要件を満たす基準として、Pマーク、ISO27001、JISの認証が必要になるということになります。
その他-書類等の準備
電子取引業務に関連する書類も計画的に早めに準備していきます。
- 1-電子取引業務における基本方針
- 2-電子取引業務の実際の画面が分かるような資料
- 3-ISO、JIS、Pマーク等の個人情報保護等の体制に係る認証取得が分かる書類
- 4-関連する社内規程・マニュアル等
- 5-電子取引業務に係る重要事項説明書のひな形
事前相談(事前面談の次のフェーズ)では、書類関連の審査・チェックが行われます。
上記の5つは、事前相談で提出する書類です。
事業許可証が発行されるまでの流れ
不動産特定共同事業を始めるまでに必要な期間は、多くの事業者が気になるところです。
この点については、管轄地域(各都道府県)や申請先(国土交通大臣または都道府県知事)によっても異なりますし、各種書類の作成状況によっても異なりますので、一概には定義できません。

ただ、平均的なスピード感としては、許可申請を行なうまでに約7ヶ月前後、許可申請から許可審査まで3か月(この期間は短縮できない)と言われています。
事前準備でやっておくべきことまとめ
事業許可申請を効率的に進めていくためには、事前準備をしっかり行うことが重要になってきます。
以下にまとめますので、チェック項目としてご活用下さい。
事前準備でやることリスト
不動産特定共同事業の許可申請で準備するすることはこちら
- 資本金の準備
- 業務管理者の調整
- 会計監査(直近3ヶ年分)
- 申請書類の準備
- 会社概要(関連会社がある場合は組織図とその事業内容を明記)
- 事業組織図
電子取引業務の申請を行なう場合は以下の項目を準備します。
- Pマーク、ISO、JISCの認証
- 電子取引業務における基本方針
- 電子取引業務の実際の画面が分かるような資料
- 関連する社内規程・マニュアル等
- 電子取引業務に係る重要事項説明書のひな形
以上が、事前準備フェーズで行なうべき準備になります。
準備期間をどれだけ濃密にするかによって許可申請手続きが効率的になる
何事も「準備9割、実行1割」と言いますが、それは不動産特定共同事業の許可申請においても例外ではありません。
申請業務全体のグランドデザインが曖昧で準備が出来ていないことで、事業を始めるのに1年・2年と時間を無駄にしてしまうケースも実際には多々あります。
事業を開始しようと思ったら、FTK事業に精通しているコンサルタントや不動産クラウドファンディングシステムの開発会社などに相談してみるのもよいでしょう。
不動産特定共同事業の市場規模も年々右肩上がりで、事業者数も現在の3倍近くまで増やすことを目標にしているという報道も見受けられます。
スピード感を持って取り組むことが、不動産特定共同事業を成功に導くためのポイントであり、そのためにも準備期間に取り組むべきことをしっかりと見極める必要があるのです。

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 櫻井
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