不動産特定共同事業による権利は有価証券か?
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株式や投資信託など、財産的価値のある権利を表す証券や証書を有価証券と言います。
有価証券は金融商品取引法の規制対象。
そして、いわゆるファンド(他者から受けた出資を用いて事業を運用、そこから出た利益を出資者に分配する仕組み)を組成するには、原則として金融商品取引業の登録が必要です。
不動産特定共同事業もファンド事業です。
しかし、その組成や持ち分の取り扱いについては、基本、不動産特定共同事業法(不特法)によって規制されています。
ただし、一部事業については金融商品取引法が適用されます。
今回は、不動産特定共同事業による持ち分が有価証券かどうか? 金融商品取引法が適用される範囲などについて見ていきましょう。
有価証券とは?

有価証券とは、財産的価値のある権利を持った証券や証書のこと。
つまり、その証券や証書があることではじめて、権利=財産的価値が証明されます。
その権利の移転や行使には、原則として証券・証書の受渡および占有が必須。
ただ、証券が持つ権利の種類や関係性は様々です。
権利と証券との結合の程度や、その移転・行使の際の証券の役割は一様ではありません。
従って、有価証券を取扱う場合には、その性格を具体的に把握しておく必要があります。
例えば、以下のような種類があります。
・債権証券:債権を表示するもの。手形、小切手、社債、倉庫証券など
・物権証券:債権と、その担保物権を表示するもの。質入証券、抵当証券など
・社員権証券:社団の社員としての地位を表示するもの。株券
また、金融商品取引法では「有価証券」が明確に定義されているものの、一般的に理解されている範囲とは異なる場合があります。
事業者と投資家、特に一般(初心者)投資家との間で勘違いが無いよう注意が必要です。
金融商品取引法について(金融庁)
金融商品取引法(金商法)と有価証券

金商法は、有価証券をはじめとする、広範な金融商品の取引等について包括的なルールを定めた法律です。
証券取引法を全面的に改正するなどにより、2007年9月に施行されました。
この法律は、金融商品に関する公正な取引、円滑な流通、公正な価格形成等を確保することが目的です。
特徴としては、投資家の保護を図るとともに、投資市場の自由な発達も妨げない為、様々な特例が設けられていること。
プロの投資家と、一般投資家とでは、適用の範囲や内容が異なる部分もあるのです。
有価証券は、この金商法の規制対象となります。
そして、ファンドは利益を出資者に分配する=分配金を得る権利=財産的価値が証明される証券または証書を扱うことになるので、金融商品取引業の登録が必要なのです。
では、不動産特定共同事業も仕組み的には同じですから、有価証券なのでしょうか?
不動産特定共同事業の持ち分も有価証券か?

金商法は、不動産を証券化した商品の発行や取引についてだけでなく、不動産の流動化によって生み出されたすべての金融商品の取引等に対しても適用されます。
しかし、不動産特定共同事業による不動産小口化商品については、金商法の適用対象外となります。
それは、不特法が適用されるためです。
不動産特定共同事業は従来の不動産投資と違い、現物不動産を保有するわけではありません。
対象不動産の組合契約に基づく権利を保有します。
それはまさに不動産を証券化した商品とも言えるのですが、そこには証票などが存在しないので、直接的には有価証券に該当しないのです。
現時点では「みなし有価証券」と呼ばれ、金商法のルールには縛られません。
ただし、特例事業者(SPC)の場合は、第二種金融商品取引業の登録も必須です。
今後は有価証券と同等の扱いに

ところが今後、不動産特定共同事業でも金商法のルールを適用する流れになっています。
実は今年3月14日に、金商法等の一部を改正する法律案が国会に提出されました。
この改正案の1つに、
トークン化された不動産特定共同事業契約に基づく権利(以下「不特事業トークン」)に金融商品取引法のルールを適用すること
とあります。
「トークン化された」なので、主に不動産クラウドファンディングのことを指しますが。
前述の通り、不動産特定共同事業は現状(特例事業を除き)金商法のルールは適用外。
これは、ブロックチェーンを活用してトークン化し販売する、いわゆるデジタル証券による取引でも同じでした。
しかし、デジタル化により複雑化、リスク増も懸念され、不動産特定共同事業法の規制のみでは不十分ではないかとの見方もあります。
また、不動産特定共同事業ではないファンド(集団投資スキーム)では既に、トークンについても金商法の対象で、規定が整備されています。
そこで、デジタル証券による流通が増加傾向であることを踏まえ、新たに金商法のルールを適用しようという流れでしょう。
今後は、不特事業トークンについても、金商法に基づく販売、勧誘規制等を適用するよう、規定が整備されていくかと思います。
まとめ
不動産特定共同事業による権利は「みなし有価証券」とされています。
現状では、不特法によって規制され、金商法は適用外です。
しかし、特例事業(SPC)の場合は第二種金融商品取引業の登録が必須。
また、今後は金商法のルールを適用していく流れもあります。
そうなると「みなし」ではなく、本当の有価証券になるかもしれませんね。
不動産特定共同事業への参入を検討されている方も、既に事業をしているが、特例事業ではないので金商法は適用外という事業者様も、ぜひこの機会に金商法についても知っておいて下さい。
投資や資産運用が広まれば広まるほど、規制もますます厳しい方に向かっていくのではないでしょうか。

この記事を書いた人
クラウリング運営会社 サイバーブリッジ株式会社 西本
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